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悲しい酒 

その人の入院は、病院に空きベッドが出た事で急に決まってしまった。
なので、ろくじろうのデーサービスの利用は突然、明日一日を残しておしまいだという。

2009.jpg


私達は、あまりにも突然の事に驚いてしまったが、きっとそれが最良の選択。

明日は普通に見守ろうと、肩を落としながらもスタッフ一人ひとりがそう思った。


朝、迎えに行くと、その人はニコニコと嬉しそうに現れた。

肩を並べて座った軽自動車の後部座席で、一度だけ聞いてみた。

「明日から入院されるのだそうですね?」

その人は、不思議そうな顔をした。

ああ、この決定を忘れてしまっているのだと気がついた。

だったら、このことには触れずに今日を過ごそうと思った。


ゆっくりとお風呂に入り、いつものラベンダーでのアロママッサージ。

お昼の炊き込みご飯、落花生の五目煮。小あじの開き。大根の味噌汁。

甲斐甲斐しく動きながら、腰を伸ばして配膳を手伝ってくれた。

みんな、大好きなものばかりだと全部平らげてくれた。


少し前まで、お米を作っていたというので、田んぼは大変でしょう?と問うと

「大変だけれど、そこには喜びがあるもの」と少女のような顔をした。


天気が良かったので、大好きな海を見にスタッフと二人で散歩に行った。


私は、待っている間にサツマイモをふかした。

みんなで食べたふかし芋は一段と甘かった。


唄をうたうのは、好きではないという彼女の家に
美空ひばりの全曲集がある事を知っていた。

昨日のうちに準備しておいた歌詞カードを出して

みんなで一緒に唄おうと促してみた。


いつもは嫌がるのに、今日はきれいな声で唄った。

そして、涙を流した。

沢山、沢山流れ続ける涙で、彼女は唄う事が出来なくなった。


私達は、別れを知らない利用者さん達に、自分達が泣いている事を悟られないように
涙を飲み込みながら、そ知らぬ顔で唄った。


もう、ここへは戻ってこない事を、彼女の無意識がきっと知っていたのだろう。

何処に、あれほどの涙を隠しもっていたのかと思うほど

彼女の涙は、止まることを知らなかった。



”ひとりぼっちが 好きだよと 言った心の 裏で泣く...”



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